運送業その他

自動車運送業において、同じ自動車を永遠に使い続けることはまず不可能です。
そんなわけで、どこかで必ず車両の入れ替えを行うことになります。
車両の入れ替えは事業用自動車等連絡書という書類を使います。
新旧の車両の詳細を記入して、各都道府県の本局輸送課に届出をして、連絡書に判を捺してもらいます。
後はその連絡書を持って、管轄の陸運事務所へ…という流れなのですが、ここで注意点。

連絡書は同日入れ替えが原則なので、その日のうち旧車の抹消(名変)と新車の登録が行えない場合は連絡書を2回に分けなければいけません。
その場合は最初に減車からの増車という形にする必要があるので、手間がかかります。
入れ替えの際は準備を整えてから行いましょう。

 今年1月に発生した軽井沢スキーバス事故を受け、国土交通省は新たな事故防止に向けてさらなる規制を打ち出してきました。
 反則金の増額や更新制度の新設、欠格期間の延長、覆面調査員の採用など、現在の杜撰な管理体制を少しでも改善させることで事故の発生を減少させようとしています。

 しかし、これで事故は減少するでしょうか。
 私はあまり効果はないように思えます。
 単純にバス会社が減っていくだけの結果になるでしょう。
 これでは、あの時に規制緩和を行って自由競争を活性化させようとした意味がありません。

 以前もお話ししていますが、この問題の根本は「安い価格で仕事を受けざるを得ない」バス会社の厳しい現実を考えなければなりません。
 かつての新規参入した会社は価格だけでなく、「大手ではできない斬新な発想」をもって競争力を上げていました。
 ですが、今はリスクをできる限り避ける経営方針が多く、なかなか冒険できる世の中ではありません。
 せっかく参入したのに、賭けに出て失敗することは大きな威信低下につながるからです。
 その結果、安易な価格競争に走ることになります。

 また、その裏にあるのは同じく新規参入によって価格競争を引き起こしている旅行会社の存在があります。
 旅行会社が無理を言わなければ、そこまでの低価格で仕事を受ける必要はないでしょう。
 しかし、それだけ「安いツアー」を求める消費者がいるのです。

 バス会社の杜撰な管理だけが事故の原因ではないのです。
 そうさせてしまった旅行会社や、求めた消費者、そしてそれを持ち上げたメディアにも大きな責任があります。
 「安くていいもの」なんて、そんな簡単に存在するものではありません。
 「いいものは高い」のです。

 管理を強化するだけでなく、「立場の弱い」ところを守る手だてを国には考えていただきたいものです。

 本日、国土交通省から貸切バスについての制度改正のプレスリリースがなされました。
 主に運送事業者に対する義務を追加したもので、運転手の運転経歴の記載や適性検査の実施、手数料記載書面の保管などが挙げられます。
 また、下限割れを防ぐために運行引受書の記載事項に上限下限の額を義務づけるなど、取り急ぎ冬のバス事故の反省点を確認したうえでの改正のようです。

 規制緩和によって自由競争を推進した結果、デフレに浸り過ぎた日本社会の悪影響を受けて安かろう悪かろうの世界になってしまいました。
 いいサービスにはそれなりの対価がかかる。
 それをもう一度認識し、「高い技術」による「高い品質」をよみがえらせてほしいものです。

 国交省が自動車運送事業や自動車整備事業などに関わる指針を策定しました。
 どれも今後の目標が定められたものではありますが、今一つピンときませんでした。
 というのも、理想論だなと。

 特に自動車運送事業に関するものでは、「荷主の都合による荷待ち時間の長期化」「運転手の労働効率の低下」の対策を「荷主との話し合いでの改善」となっていることなど、事実上難しいことです。
 景気の停滞で荷主側としても運送費を少しでも安くしたいという思惑はあります。
 また、荷主側の方が立場が強いため、いくら話し合いの場を設けても簡単に通じるとは思いにくいのです。

 これは現在の経済政策において、金融緩和策によって大企業の業績が上がっても、大半を内部留保に費やし、従業員や下請けに還元しないのと同じことです。

 言い方は厳しいようですが、根本的に解決させるには法制化あるいは通達にしてでも荷主に対して運送事業者へ過分な要求をさせないようにする必要があります。
 大企業による「営業努力によるコストカット」は「下請けへの買い叩き」ということが多くみられます。

 もちろん企業努力は企業各々で必要でしょう。
 しかし、外注や下請けに対しての買い叩きは結果として自分の首を絞めることをそろそろ認識しなければなりません。
 「代わりはいくらでもある」ではなく、「頼みを聞いてくれるところを作るのは難しいもの」なのです。

 京都の京丹後市にてアメリカの配車サービス「ウーバー」によるライドシェアが始まりました。
 このライドシェア、以前にも話題にしましたが、簡単に言うと「マイカーによるタクシー業務」のことで、「白タク」を例外的に認めたものになります。
 あくまで公共交通機関の乏しい過疎地域での運用が主になるようです。

 ライドシェアはタクシー業界が猛反発しているのですが、営利企業である以上はお客さんの少ない地方に台数を割くわけにもいきません。
 本来であれば交通手段が少なく、高齢者の多い地方にこそタクシーが必要なはずなんですけどね。
 こういった対策が取られてくれば、高齢者による暴走事故も少なくなるのではないかと、ひとつの期待を持っています。

 ドライバーは登録制で、エリアも京丹後市限定で行うとのこと。
 問題はタクシーとの競合でしょう。
 どちらにも主張にはそれなりの理がありますので、どう落としどころを作るか…。
 時間はかかりそうですね。

 ただ、重要なのはお客さんの利便性と安全。
 その点を忘れてはいけません。

 軽井沢の貸切バス事故を受けて、運行管理者についての規制が強まることになりそうです。
 事故の際は杜撰な管理体制が露呈し、また運行管理者自身が会社に留まっていなかったという事態も重く見たと考えられます。
 具体的には、これまでは保有台数29台以下の会社は運行管理者1人でよかったものが、40台以下で最低2人を確保しなければならなくなりました。
 運行管理者の取得条件も厳しくなり、国家試験をパスしなければ管理者になれなくなります。(今までは実務経験があれば、特定講習でなれる方法がありました)

 正直なところ、この辺りが規制の限界かなと思います。
 根本的な原因はバス会社ではなく、料金を叩く旅行代理店や、それに乗っかる消費者の存在であることは明らかなのですから。
 最低額を下回る金額を提示するような旅行代理店を取り締まるくらいのことをしなければ、バス会社に負担が行くだけになってしまいます。
 同じことが必ず起きてしまうでしょう。

 もちろん、取り締まったり規制したりするだけでは、こういった問題はなくならないと思います。
 社会全体が「サービスには相応の対価が必要である」という認識をもう一度しっかりと持たなければなりません。
 それが結果としてデフレ脱却、そして景気回復へと繋がるのです。

 Amazonの送料無料サービスが一部終了するというニュースがありました。
 早くて安いがAmazonの良さでもありましたが、送料無料サービスによって運送業者が配送をやりたがらないという話もありましたので、一概に悪いことではないのかなと考えています。
 送料無料といいながら、その「送料」はどこが持つのかということを考えれば、おのずと分かると思います。
 結果として、サービスの向上や運送業の状況が好転するのなら、これもありでしょう。

 …問題は、「無料じゃなきゃ使わない」と言い出す人が増えやしないかという点です。
 あくまで無料はサービスだったわけで、これを当然と思い込んでしまう人がどれだけいるか。
 これもまた、デフレの弊害なのかもしれません。

 先日の広島でのトンネル事故。
 事件の全容が明るみに出るにつれて、どうやら運転手の居眠り運転が原因らしいということが分かりました。
 運転手本人も当時の記憶を偽るなど、問題があるように感じましたが、この運転手を雇っていた運送会社にも過度の労働をさせていたなど多くの違反があるらしいとのこと。

 「またか…」と思いました。
 今や他人事ではない運送関係の事故。
 トラックにしてもバスにしても、これだけ杜撰な運行管理が大きな問題を起こしているにもかかわらず、同じことが繰り返されていきます。
 そして犠牲になるのは何の落ち度のない方々。
 これが「サービス」といえるのでしょうか。

 もちろん、これには「安く、確実に」を「義務」にしてしまっている社会があります。
 何度も申し上げてることですが、もはやこの「デフレ」体質を改善しない限り、日本の経済はよくなりません。
 「いいサービスを提供させるには相応のコストがかかる」というごく当たり前のことをもう一度見つめなおさなければならないのです。
 安くていいものを持ち上げ、過当競争を激化させるメディアも考え直してもらいたいです。

 このままの状況が進めば、消費者は企業を信用しなくなり、経済活動は余計に鈍化します。
 また、企業の景気が悪くなれば運送業もさらに厳しい状況に陥るでしょう。
 これ以上不幸な事故を起こさないためにも、社会全体で考えていかなければならない問題なのです。

 あるところからの問い合わせだったのですが、「運行管理者とドライバーの兼任はできないという文言を見たのだが、トラック協会に聞いてみるとそんな法令はないと言われた」とのこと。
 確かに貨物自動車運送事業法には兼任できないという旨の文言はありません。
 また、手引きを見ても「兼任できません」と書いてある運輸局と書いてない運輸局があります。(参考に、関東は書いてないですが、近畿は記載があります)

 しかしこういった重要なルールが近畿だけにあるとは考え難く、そもそも運行管理者がドライバーとして出ていってしまっては、その間の管理はどうなるのかということを考えれば、事務所常駐である必要があるのはお分かりかと思います。

 原則、運行管理者とドライバーの兼任はできないものと考えておいてください。
 確認は協会さんよりも運輸局に直接しましょう。

 2週間ほど前に発生し、今もまだ原因究明が続いている軽井沢のバス事故。
 大学生13人の命が奪われ、また運転手も亡くなってしまったために事故原因の分析が非常に難しくなっています。
 杜撰な運行管理が生んだ悲劇。
 事実が少しずつ明らかになってくるにつれ、4年前の関越バス事故と何ら変わらない状況に、まるで教訓が生かされていないと思いました。

 旅行業にしても、運送業にしても、私たちはこんな悲劇を生むためにお手伝いをしているのではありません。
 確かに利益を上げなければ商売は成り立ちませんが、人の命を天秤にかけるなんてことは絶対にあってはならないことです。

 以前から申し上げてはいますが、この悲劇を繰り返さないためには社会全体で考え方を改めなければなりません。
 「安くていいものは存在しない」という概念をしっかりと持たなければ、過当競争は再び起きるでしょう。
 マスコミや経済学者の「安く買うことが賢い消費者だ」という言葉が作り出した虚像を打ち壊さなければいけません。
 本当の意味での「賢い消費者」とは、「負担する金銭と、受けるサービスの質のバランスをしっかりと考えられる消費者」のことをいうのです。
 安いなら相応のチープさで割り切り、重要な場面では十分なコストをかけて快適性や安全を確保する。
 そういった使い分けができる消費者のことを本当の意味で「賢い消費者」というのです。

 良いサービスには十分な投資を。
 この住み分けが過当競争を減らし、デフレをなくしていけると思うのです。