週刊ヤングマガジン(講談社)に連載されている、しげの秀一先生の漫画「頭文字(イニシャル)D」が来週で最終回を迎える…という話です。
ご存知の方も多いと思いますが、この漫画は連載開始から間もなく「ハチロク」をはじめとする走り屋ブームを起こした、「スポーツカー冬の時代」を陰から支え続けてきた作品です。
バブルの崩壊から景気が下向きになり、エコカーが世の中に広がることで徐々にスポーツカーは消えていきました。
しかし、この漫画を呼んだ若い世代が作品に登場する車に憧れを持つことによって、中古車市場でのスポーツカーの価値は下がることなく人気を保ち続けたのです。
昨年、トヨタが発売したスポーツカー「86」も、この漫画によるハチロクブームがなければ、違う名前になっていたかもしれません。
「ハチロク」という車はもちろん通称で、正式名は「スプリンター・トレノ」といいます。
その中でも「AE86型」と呼ばれるものを「ハチロク」といいます。
発売は昭和58年、今から30年前のことです。
漫画の連載が始まったのが平成7年なので、その時点ではまだ手軽に入手できるレベルの中古車だったことがうかがえます。
この頃の車って、いわば「バブル期の車」なんですよね。
派生車をいっぱい出してみたり、ちょっと流行りになりそうならすぐに手を出してみたり…。
スポーツカーにしても多くありました。
トヨタ・セリカ、日産・シルビア、ホンダ・プレリュードなど、一時代を築いたものがかなり存在しました。
HPのコラムにもかつて書きましたが、現在の自動車は個性に欠けていると思います。
「乗りたい車がない」という声も少なくありません。
しかし、こだわりを持たせてしまうと高額になり、今度は若者に手が出せなくなります。
安全装備は必要ですが、一方で高額な装備は必要あるのか。
また、どんどん増えていく3ナンバー規格の車は本当に必要なのか。
その点で私は疑問があります。
コンパクトでも走りが楽しめて、かつ若者が「欲しい、これなら手が出せるかもしれない」と思わせるような車を再び見てみたい気がします。
スポーツカーでなければいけないなんてことはありません。
ただ、どれも同じような車では、いずれ「車を運転する楽しみ」が世の中から消えてしまうのではないかと思ってしまうのです。
ひとつの時代の終焉を見て、そんなことを考えた日でした。